首都キーウで複数の爆発8人死亡 全土にミサイル攻撃か

ウクライナの首都キーウで10日、複数回にわたって爆発があり、ウクライナ内務省の高官は8人が死亡したと明らかにしました。ゼレンスキー大統領は全土でロシアによるミサイル攻撃が起きていると非難しています。

ロシアのプーチン大統領は、一方的に併合したウクライナ南部のクリミアとロシアをつなぐ橋で起きた爆発をウクライナ側による破壊工作だと非難していたことから報復攻撃を行った可能性もあり、事態は緊迫の度を増しています。

ウクライナの首都キーウの中心部で10日午前、日本時間の10日午後、複数回にわたって大きな爆発がありました。

キーウのクリチコ市長によりますと市内の2つの地区で爆発が起き、そのうち1か所は大統領府から1キロほどしか離れておらず、内務省の高官はSNSに投稿し、合わせて8人が死亡、24人がけがをしたことを明らかにしました。

キーウで撮影された映像では、街頭で複数の車が激しく燃え、消防隊員が消火活動を行っているほか、けが人が手当てを受けている様子が確認できます。
また、道路にはたくさんのがれきが散乱し、公園とみられる敷地に大きな穴があいて炎や煙が立ちのぼる様子も映っています。
また、ウクライナの内務省の高官は、市内にかかる歩道橋の近くで起きた爆発を記録したとする映像をSNSで公開しました。

映像には、歩道橋のすぐ下で爆発が起き、橋が炎や煙に覆われる様子が映っています。ロイター通信が配信した爆発地点とされる映像では、歩道橋の下の地面に大きな穴があき橋の一部が壊れていることが見て取れます。
また、西部リビウ州のコジツキー知事は現地時間10日の午前9時50分ごろ、日本時間午後3時50分ごろ「州内にあるエネルギー関連のインフラ施設に攻撃があった。新たな攻撃のおそれがあるので市民は避難所にいるようにしてほしい」とSNSに投稿し市民に避難を呼びかけました。

ゼレンスキー大統領は日本時間の10日午後3時45分ごろ、自身のSNSに「彼らは、われわれの存在を消そうとしている」とロシアによる攻撃だとして非難したうえで「ウクライナ全土でミサイル攻撃が起きている。避難所から出ないでほしい。自分と家族を守り、持ちこたえてほしい」と呼びかけました。
一方、ロシアの国営テレビはウクライナ側による報道だとして、首都キーウやリビウのほか東部ハルキウやドニプロペトロウシク、南部オデーサ、北西部ジトーミルなど各地で爆発がありエネルギーのインフラ施設が破壊されたと伝えています。

ロシアのプーチン大統領は2日前にウクライナ南部のクリミアとロシア南部をつなぐ橋で起きた爆発について「ロシアの極めて重要なインフラの破壊をねらったテロ行為であることは疑いの余地がない」と述べ、ウクライナ側による破壊工作だとする見方を示していたことから、一連の攻撃は報復だった可能性もあります。

プーチン大統領は日本時間の10日夜、外交や軍事など重要政策を扱う安全保障会議を開く予定で、今回の事態を受けて今後のロシア側の対応を決定するものと見られ事態は緊迫の度を増しています。

G7オンラインで首脳会合へ

ウクライナへのミサイル攻撃を受けて、G7=主要7か国の議長国ドイツの政府報道官は定例の記者会見でロシアを強く非難するとともに、現地時間11日午後2時、日本時間の11日夜9時からオンラインの首脳会合を開いて対応を協議し、ウクライナのゼレンスキー大統領もリモートで参加すると明らかにしました。

また今回の攻撃を受けて10日、ショルツ首相がゼレンスキー大統領と電話会談を行い、ウクライナと連帯し今回の攻撃の被害からの復旧を可能な限り支援すると伝えたということです。

キーウ市長「ロシアのミサイル攻撃 危険な状態続く」

クリチコ市長は現地時間10日の午前9時半ごろ、日本時間午後3時半ごろ、自身のSNSに「首都がロシアのテロリストに攻撃されている。市内の中心部などでミサイルが命中し、危険な状態は続いている」と投稿しました。

「中心部に住むすべての人に伝えるが避難所にとどまり、急用がないかぎり、きょうは街に出ない方がいい。キーウの中心部は警察官によって封鎖され、救助隊が救出活動を行っている」として市民に注意を呼びかけています。

ゼレンスキー大統領「死者やけが人出ている」「標的は市民だ」

ウクライナのゼレンスキー大統領は現地時間10日の午前9時45分ごろ、日本時間午後3時45分ごろ、自身のSNSに「彼らはわれわれの存在を消そうとしている。南東部ザポリージャで寝ている人や東部ドニプロや首都キーウで通勤中の人たちを殺そうとしている。ウクライナ全土で防空警報が鳴りやまなく、ミサイル攻撃が起きている。残念ながら亡くなった人やけが人がでている。避難所から出ないでほしい。自分と家族を守り、持ちこたえてほしい」と呼びかけました。

また、ゼレンスキー大統領は現地時間10日午前11時ごろ、日本時間午後5時ごろ自身のSNSに新たな動画を投稿しました。

この中で「われわれはテロリストの相手をしている。何十発ものミサイルやイラン製の自爆ドローンが使われている。彼らの標的は2つある。1つ目は全国のエネルギーインフラだ。われわれにパニックや混乱を引き起こそうとしている。2つ目は市民だ。できるだけ大きな損害を与えようとこうした時刻と攻撃目標をわざと選んだ」と述べ、ロシア側を強く非難しました。

そのうえで、国民に対し「きょうは身を隠し、安全規則を守ってほしい」と身の安全を守るよう呼びかけました。

ウクライナ軍総司令官「ミサイル75発 うち41発迎撃」

ウクライナ軍のザルジニー総司令官はSNSに「ロシアは、ウクライナ国内に対して大規模なミサイル攻撃と航空機からの攻撃、そしてドローンによる攻撃を行っている。敵は75発のミサイルを発射したが、われわれはそのうちの41発を迎撃した。わが軍は国民を守るためのあらゆる手段を講じている。皆さんは避難所に逃げてほしい」と投稿しました。

NHK取材班も爆発音と煙を確認

NHKの取材班が滞在するウクライナの首都キーウのホテルからも10日午前8時20分ごろ、爆発音が複数回、聞こえました。爆発音は少なくとも3回聞こえました。

ホテルからも市の中心部で煙のようなものが上がるのが確認できました。音とともにホテルの窓ガラスが揺れました。

およそ1時間後に再び爆発音

NHKの取材班が滞在するウクライナの首都キーウのホテルでは、10日午前8時20分ごろに続き、およそ1時間後の午前9時15分ごろ再び、爆発音が聞こえました。
煙などが見えたり窓ガラスが揺れたりすることはありませんでした。

キーウを含めウクライナでは全土で10日早朝から防空警報が出されています。

アメリカ大使館「ウクライナを地上の交通手段で出国を」

ウクライナにあるアメリカ大使館は10日ホームページなどで「ロシアはウクライナの民間および政府機関の施設を攻撃し、民間人に直接的な脅威を与えている。アメリカ市民はとりあえず避難してもらい、安全が確認された時点で直ちにウクライナを地上の交通手段で出国してほしい」と呼びかけました。